6月29日(木) 「東洋の魔女はどこへ行く」


 ちょっと以前の話になってしまうが、女子バレーボール日本代表がオリンピックの世界
最終予選に6位と惨敗した。これにより、東京オリンピックで競技が採用されて以来の(
ボイコットしたモスクワ五輪を除く)連続大会出場が途絶えたことになる。
 女子バレーボールといえば、「東洋の魔女」を引き出すまでもなく、64年東京・76年モン
トリオール両五輪金メダルという輝かしい歴史を持ちつづけてきた、いわゆる「日本のお
家芸」であった。その後も、中田久美や大林素子、斎藤真由美などの実力・人気ともに
かね揃えた個性あふれる選手達が、必死の思いでバレーボールにある「何か」守りつづ
けてきた歴史がある。だからこそ、この敗戦はそんな時代を終焉を告げる鐘の音となる。
 東京五輪から40年近く経とうとしてる現在、女子バレーボールは大型化・パワー化の
一途をたどっている。各代表チームが2m級を数人抱え、エースと呼ばれる人のアタック
は、ブロックに触ることなくしてレシーブすることさえできない。その世界の主流について
いけず、少子化も手伝ってか、日本の女子バレーは世界に置いていかれる状態になって
しまったのだ。日本で2mの選手を探すのは難しい。また、それでかつ優れた運動能力
を有する女子選手を探すことなど、不可能に等しい。今後も、世界の競合を相手に、苦
戦を強いられることに間違いはない。
 しかし、しかしである。では、はたして日本の女子バレーがもう世界に通用することが
ないのか?といったら、それには疑問符がつく。決して、あきらめる必要はない。それを
解決するヒントは、日本と似た体格を持つイタリア女子チームが、今回の最終予選を1位
で通過したことに隠されている。
 イタリア女子チーム。去年のワールドカップには、日本に1−3で惨敗したチームが、
なぜ今回の成績を上げることができたのか?その答えは、両国の国内リーグを見れば
はっきりとする。イタリアには、サッカーと同様に「セリエ・A」というバレーボールのプロ
リーグが存在する。以前に、日本代表の大林素子や吉原知子が所属したことで注目を
浴びたこともある。この「セリエ・A」には、世界初のプロリーグということもあり、ワールド
クラスの選手が多数集まり、厳しいリーグ戦が連日のように行われている。そこには、
「ジャニーズ事務所」や「モーニング娘。」といったアイドルグループによる華美な演出な
どなく、来場者はただひたすら選手達の情熱あふれるプレーにのみ目を配らせる。もし、
不満足な試合などやったりしたら、イタリア人の気質を考えれば、容易に想像できる。
そのような「明日の保証のない」厳しいプロの世界の中で、イタリア選手達は、世界に
通用する力を急速に、そしてはっきりと力をつけてきているのだ。
 一方、日本の国内リーグをみればどうだろうか。企業まる抱えのチーム運営に加え、
昨年から「日本人選手の出場機会が減る」という、意味不明な理由により、外国人選手
の登録を禁止にした。そのことにより、リーグの実力は急速に衰え、リーグの存亡さえ
危ぶまれる状況にまで急落することになる。その状況を、元・東洋の魔女達の監督が
憂うこともなく、ただひたすら「今まで通り」の根性バレーを突き進むのみである。これで
結果を求められる選手達は、まるで体育館に放たれた道化師達のようだ。
 今回の予選敗退は、日本女子バレーボールの歴史にとって、とても大切な節目となる。
はたして今回の失敗を、バレーボール協会はどう対処するのか?日本人の肉体的な要
因だけを理由にして、今後も同じことを繰り返すのだろうか?それとも、今回の優勝国に
学び、4年後のアテネを目指した本格的な強化を図っていくのか?その答えは、おのずと
見えてくる。